三菱ふそうトラック・バス株式会社(FUSO)様は、製品品質と業務効率にとって迅速な問題解決とエンジニアリングのフィードバックが不可欠な、高度に技術的な環境で事業を展開しています。FUSO様は地域横断で技術苦情を集約する「Zeusポータル」(車種・部品・地域などの構造化メタデータと、症状・原因・解決策の詳細を含む)を運用してきましたが、蓄積された苦情は数十万件規模に達し、価値ある一方で扱いの難しいナレッジベースとなっていました。長年のパートナーであるCubastionは、Zeusの上に載る知能層「Engineering.IA」を構築し、過去の苦情知見を即座に検索・比較・活用できるようにしました。
Challenge
蓄積された知見にアクセスできない非効率
事業・技術の両面で生じていた課題をご紹介します。
本質的な課題は、知見が存在しないことではなく、大規模なデータからそれに迅速かつ一貫してアクセスし、活用できないことにありました。
ビジネス面の課題
- Excelによる手作業フィルタリングに依存した時間のかかる苦情調査
- 大規模データセットからの類似苦情の特定の難しさ
- 現行課題に対する解決策ベンチマークの遅延
- 再発する技術パターンへの可視性の不足
- チーム・地域をまたぐナレッジアクセスの不均一
技術面の課題
- 形式や記述が多様な数十万件規模の苦情データの処理
- 同種の課題が異なる表現で記述される意味的な揺らぎ
- 構造化メタデータと文脈的類似性の両立
- 技術的正確性を損なわないインサイトの生成
- 元の苦情レコードへのトレーサビリティの担保
Solution
Cubastionの解決策 ― Zeus上の生成AIナレッジ検索層
提供した検索・解析機能をご紹介します。
Engineering.IAは従来型の検索インターフェースではなく、Zeus苦情エコシステムの上に構築したAIナレッジ検索層です。大規模な過去苦情を、解決判断を加速するインテリジェントなクエリ可能システムへと転換します。
- インテリジェントな苦情検索:キーワードではなく文脈で類似の過去苦情を抽出(車種・地域・部品を横断、表現の違いにも対応)
- 類似度ランキングとクラスタリング:文脈的関連性で順位付けし、関連課題をグループ化、再発パターンを可視化
- 統合された解決インサイト:複数苦情を横断した要約を生成(集約ビューと詳細レコードの双方、元の解決ロジックと整合)
- 出典付き回答:すべての回答に苦情ID参照を付与し、Zeusレコードへのトレーサビリティを担保
- 会話型クエリ:自然言語で調査的・探索的な問い合わせに対応(テキスト・音声入力)
- 意思決定に適した構造化表示:要約・ランク付き苦情・参照を組み合わせ、判断しやすい形式で提示
Architecture
Zeusの上に載る4層のクラウドネイティブ構成
既存システムを置き換えず、知能層として統合する設計です。
Zeusから切り離された単体のチャットボットではなく、責務を明確に分離したモジュール型の4層アーキテクチャとして設計しました。Zeusを置き換えるのではなく、その上に知能層を載せることで、原本(system of record)としてのZeusを維持します。
- アプリケーション層:React/JSによる会話UI。テキスト・音声入力、苦情ID引用付きの構造化表示、評価、読み上げ、テキスト出力、履歴保持
- AIインテリジェンス・検索層:RAGによりZeusデータに根ざした応答を生成。意図解釈、構造化フィルタ、セマンティック類似検索、ランキング、クラスタリング、適応的な応答構築
- データ・ナレッジ層:Zeus APIからの構造化データ取得、メタデータ索引(車種/地域/部品/苦情ID)、セマンティック検索のためのベクトル索引、会話履歴・評価・ログの保管
- セキュリティ・基盤層:Azure Kubernetesでのコンテナ運用、ステートレス設計、エンタープライズ認証、認可ユーザーへのアクセス制限
Capabilities
この事例で実証された提供価値
お客様がCubastionと取り組める領域の一例です。
本プロジェクトを通じて、以下の専門領域における実装力を実証しました。
- 大規模RAG(検索拡張生成):データ検索と生成AIを組み合わせ、根拠に基づく追跡可能な回答を大規模に提供
- ハイブリッド検索(構造化+セマンティック):構造化フィルタと意味的類似を統合し、表現の違いを超えた高精度な検索
- エンタープライズ統合とスケール:セキュアAPIで既存基盤と連携し、Kubernetes上で高可用にグローバル展開
Engineering.IAは検索インターフェースではなく「調査のアクセラレーター」として機能し、洞察までの時間を短縮し、解決の確信度を高めています。本事例で確認された主な効果は次のとおりです。
- AI支援の検索による苦情調査の高速化と、履歴探索時間の大幅な削減
- 手作業のExcelフィルタリングからの脱却による効率の向上
- 履歴データを用いた解決ベンチマークの迅速化と、より的確な意思決定
- 再発パターンの早期検知による予防的なエンジニアリング介入
- 苦情IDに紐づく出典提示によるトレーサビリティと意思決定の確信度の向上