現場に時間を取り戻す——AIと業務自動化が支える、医師の働き方改革。2024年4月、時間外労働の上限規制が病院の医師にも適用されました。人員は限られているのに、医療を止めることはできない。この厳しい制約のもとで、人にしかできない業務のために時間を取り戻すべく、業務プロセスを再設計することが課題です。本シリーズ(全3回)では、医療のデジタル変革(DX)を多面的に取り上げます。第2回は、医師の働き方改善を、CXOの視点で解説します。
まず「時間がない」を可視化する

2024年4月から、病院勤務医の時間外労働に上限が設けられました。原則は「年960時間・月100時間未満(A水準)」。地域医療の確保などやむを得ない例外でも、上限は「年1,860時間」(厚生労働省)です。長時間労働に頼ってきた職場には、やり方の根本的な見直しを迫る変化です。
- 年960時間2024年4月に施行された、時間外労働の原則上限(A水準)。
- 年1,860時間救急医療など特定業務に適用される特例水準(B・C水準)の上限。
- 39%副業・兼業を含む医師の労働時間を「おおむね把握している」と回答した医療機関の割合(大学病院では24%)。
規制は始まりました。しかし、そもそも労働時間を正確に把握できている施設は約40%にとどまります。見えないものは、減らせません。働き方改革の第一歩は、労働の実態を可視化することです。
医師の時間は、どこへ消えるのか
- 課題1:記録作成と文書業務の負担カルテ、紹介状、各種サマリー、同意書——医療の質に不可欠でありながら、診察の合間を埋め、多くの時間を奪います。
- 課題2:非専門職でもできる業務への集中本来は他職種やシステムに委ねるべき業務が、慣例的に医師へ集中し続けています。タスクシフトの制度化は進んでも、現場の実装が追いついていません。
- 課題3:分断されたシステムと手作業部門ごとに分かれたシステムを、人が手作業でつなぐ。この「手でつなぐ」作業が、見えない残業の温床です。
反復作業はAIで、判断は人で
必要なのは、医師をより速く働かせることではなく、医師の専門性を必ずしも要しない業務を自動化することです。AIと自動化が貢献できる領域は明確です。
- 記録の自動下書き診察の会話を音声認識で書き起こし、AIが要約・構造化してカルテの下書きを生成。医師の役割は「ゼロから書く」から「確認し承認する」へ移ります。
- 事務作業とデータ入力の自動化システム間のデータ転送、予約・問い合わせ対応、定型文書の作成を自動化。分断されたシステムをつなぎ、手作業を減らします。
- 知識アクセスの支援マニュアルやベテランの暗黙知に埋もれた情報へ、対話的にアクセスできるAIアシスタント。経験差を補い、問い合わせ対応の負担を減らします。
- 労働時間の可視化実際の労働実態をデータとして捉え、偏りやボトルネックを特定。改革を、空虚な掛け声ではなく実践的な行動として実装できます。
「現場で使えるAI」の視点
業種は異なりますが、Cubastionは自動車分野で、整備士の技術情報アクセスを支援するAIアシスタントを構築した実績があります。多言語対応と24時間稼働により、問い合わせ対応の負担と応答時間を大きく削減しました。専門職の知識アクセスをAIで支えるという発想は、医療分野にも応用できます。※上記は自動車分野の事例であり、医療分野での実装成果を示すものではありません。「現場で使えるAIを設計する」という概念の参考として提示しています。
人を増やせない時代の医療を、どう守るか
働き方改革は、医療の質を下げる妥協ではなく、限られた人材で持続可能な医療を守る「設計」の課題です。次回は、この「限られた専門人材」の典型例として、世界最多の検査数を抱えながら読影体制が追いつかない放射線科の現実と、AI画像診断の可能性を取り上げます。医師の働き方改革のDXについては、Cubastionにご相談ください。
