日本は、人口あたりのCT・MRI台数が世界最多です。しかし、そこから生まれる膨大な画像を読影できる放射線科医は、相対的に不足しています。本稿(第3回/全5回)では、「機器は豊富、専門医は希少」というこの構造的不均衡を、AIがどう解きほぐせるかを、CXOの視点で解説します。
「機器は豊富、専門医は希少」をAIはどう解くか

日本は先端医療機器の導入で世界をリードします。人口100万人あたりMRI 51.7台はG7平均(25.8台)の約2倍で、CT台数もOECD統計で世界最多です。一方で、それらの画像を読影する専門医の時間は限られたまま——豊富さと希少さが同居しているのです。
- 世界第1位人口あたりのCT・MRI台数。MRIはG7平均の約2倍。
- 8,137件放射線科医1人あたりのCT・MRI検査の年間潜在的業務量(米国に次ぎ世界2位)。
- 約40%日本で放射線科医が読影するCT・MRI検査の割合(欧州では全レポートを専門医が作成する国が多い)。
ボトルネックは「撮る」ではなく「読む」
- 課題1:読影需要と専門医数の不均衡専門医の総数は画像量に追いつけず、専門医の関与は検査の一部に限られます。
- 課題2:地域的な偏在放射線科医の分布は地域で偏り、専門医が集中する地域ほど読影関与が高い一方、地方は強固な読影体制の確保が困難です。
- 課題3:緊急度の判断に要する時間大量の検査の中から緊急例を見つけるのは時間がかかり負担が大きい。順次処理では、緊急例の検知が遅れる恐れがあります。
AIは「代わりに読む」のではなく「下読みする」

重要な点は、最終診断をAIではなく専門医に委ねることです。希少な専門医の時間を、価値ある判断に集中させます。トリアージ(優先順位付け)——AIが緊急度の高い所見を検出し、待機リストで優先。専門医がまず緊急の患者に対応でき、見落としや遅れを防ぎます。読影支援と見落とし防止——異常の同定や定量計測を自動化し、読影の質を高める。AIが「第2の目」として機能し、専門医の確認負担を減らします。
専門性は「増やす」だけでなく「増幅する」
AIは、あなたの代わりに読むのではありません。希少な専門医の時間を価値ある判断に集中させるために、あらかじめ「下読み」しておくのです。
人員の急増が難しいなか、現在の専門家の能力を「増幅する」ことが最も現実的です。これは画像診断にとどまらず、高齢社会における介護や見守りにも当てはまります。次回は、2040年の介護人材不足と、予防・見守りにおけるAIの支援的役割を取り上げます。※医療機器としての画像診断AIは、薬機法に基づく承認・認証に加え、施設での検証と運用体制を要します。実装には「精度」だけでなく、ワークフロー統合と責任分界の設計を考慮する必要があります。画像診断・放射線科のDXについては、Cubastionにご相談ください。

Shambu Prasad Doolthi, Cubastion Consulting