めまぐるしい医療現場では、患者の予後を決めるのは「連携」です。本シリーズ(全3回)では、医療のデジタル変革(DX)を多面的に取り上げます。第1回は、一刻を争う場面における医療連携を、CXOの視点で解説します。
「Time is Brain.」

脳卒中治療は、連携の決定的な重要性を象徴します。1分の遅れが、後遺症の重さを左右し得るのです。血栓溶解薬tPA(アルテプラーゼ)は、発症から4時間30分以内に投与しなければなりません。ガイドラインは、来院から1時間以内の治療開始を推奨します。投与の前には、約40の評価項目を複数の部門で確認する必要があり、救急医・看護師・放射線科医・臨床検査技師・薬剤師・専門医による並行作業が求められます。
- 4時間30分tPA投与の、発症からの時間的制限。
- 約40項目複数部門で確認を要する臨床タスク。
- 1時間以内来院から治療開始までの、ガイドラインの目標。
遅れは「能力」ではなく「連携」から生じる
従来の電話ベースの連絡には、典型的な3つの課題があります。
- 課題1:情報の歪み(伝言ゲーム)中継のたびに情報が変わり、重要な所見が抜け落ち、診断の根拠が崩れます。
- 課題2:連絡先が分からない頻繁な人事異動で連絡網が更新されず、「誰に電話すべきか」を特定する時間がそのまま遅れになります。
- 課題3:つながらない・離れられない処置中や多忙の専門医に連絡がつかず、不在着信が致命的な遅れを生みます。
「速く伝える」から「同時に見る」へ

これらの課題に応える2つの設計原則があります。
同時通知と状況の可視化 発症・患者到着・治療完了を、関係者全員のスマートフォンに通知。タスクの状況を一つの画面で共有し、電話の必要をなくします。
AIによる連携の加速 救急隊のデータからの事前トリアージ、画像からの主幹動脈閉塞の自動検出、搬送先の最適化といった「到着前の準備」を可能にします。
連携の改善は、数字に表れる
藤田医科大学の脳卒中チームによる観察研究(『現代医学』2024年掲載)は、チーム連携に対するICTの有効性を示しています。tPA投与時間は10.2分短縮 (58.0分→47.8分、p<0.001)し、とりわけチーム招集の局面で有意な改善が見られました。
| 指標(316例・4施設・2018〜2020年) | 改善 |
|---|---|
| tPA 来院から開始まで | −10.2分 (p<0.001) |
| 血栓回収療法 来院から開始まで | −5.3分 (93.8→88.5分、p=0.004) |
| 退院時の機能予後の改善 | p=0.003 |
出典:松本ほか「急性期脳卒中治療におけるICTを活用したチーム医療支援」『現代医学』第71巻第2号(2024年)。
すべての時間制約のある医療に、連携を
「Time is Brain」の構造は、脳卒中治療にとどまりません。心筋梗塞、外傷、産科救急、敗血症など複数の異なる治療に従事する人々が同時に動かねばならない、あらゆる場面に当てはまります。次回は、こうした場面を支える「人」と、AIのコラボレーションによる医師の働き方改革を取り上げます。医療連携のDXについては、Cubastionのビジネスソリューションにご相談ください。

Shambu Prasad Doolthi, Cubastion Consulting